現在、陸上養殖は政府の成長戦略の一つとして掲げられ、「次世代の有望なビジネス」として大きな注目を集めています。
しかし、その華やかなイメージの裏側には、現場のプロたちが直面している極めて厳しい現実があります。
この記事では、2026年2月に開催された「シーフードショー大阪」で開催されたセミナー
「陸上養殖を検討中の方へ~川上から川下の現場トップランナーに聞く~」
の内容をもとに、陸上養殖の現実と成功へのヒントをご紹介します。
「成長戦略」という言葉の裏に隠された厳しい現実
現在、陸上養殖は政府の成長戦略の一つとして掲げられ、「やれば儲かる」といった華やかなイメージで語られることが少なくありません。
しかし、現状では陸上養殖で利益を出せている企業はほとんど存在しないと言っても過言ではありません。
コストに対して販売価格が十分に見合っていないという、ビジネスの根幹に関わる課題が残っています。
消費者は「陸上だから」という理由では買わない
実際に消費者は「陸上養殖だから」という理由だけで商品を選ぶことはありません。
すでに市場には、安くて美味しい海面養殖(ノルウェーサーモンなど)が確立されており、それらと比較される厳しい立場にあります。
また、陸上養殖で育てた魚には、特有のカビ臭さが発生してしまうことがありこれらに対しての対策も検討していく必要があります。
陸上養殖の利点として、「寄生虫リスクが低く、今まで生で食べられなかった魚も生で食べられる」といったものが挙げられますが、その点については既存の「冷凍技術」で代替可能であり、それだけでは完全な差別化にはなりません。
陸上養殖にしか提供できない「ならではの価値」とは何なのかを、真剣に突き詰める必要があるのです。
成功へのヒント「カワハギ」の事例

そんな中、今後の「勝ち筋」として挙げられた好例がカワハギです。
陸上養殖のカワハギは、「肝(きも)」が非常に大きく育ちやすく、市場での評価が極めて高いという特徴があります。
このように、その魚種が陸上で育つことでどのような独自の魅力を備えるのかを見極めることが、ビジネスとしての成否を分けます。
もちろん、生産性の向上やコスト削減といった課題は依然として山積みです。
当たり前のことですが、「かかったコストに対して、売る価格が十分に高くなる」という再算性が取れなければ、事業としての継続は不可能なのです。
ビジネスとしての「ハッピーな未来」を目指して
陸上養殖は、政府の戦略だからといって勢いだけで突き進めば大きな困難に直面します。
しかし、現状の課題を冷静に見極め、「陸上養殖にしか提供できない独自の価値」を創っていくことができれば、陸上養殖を利益の出るビジネスとして押し上げていくことも可能でしょう。
生産者から消費者まで、関わるすべての人がハッピーになれる未来を作るには、技術的な成功だけでなく、「ビジネスとして成り立つか」という視点を忘れてはなりません。
陸上養殖の真の挑戦は、まだ始まったばかりです。

