3月上旬、まだ厳しい寒さが残る北海道えりも町を訪ねました。
北海道えりも町といえば、日高昆布の有数の産地として知られていますが、冬から春にかけてのもう一つの主役が「エゾバフンウニ」です。
2021年9月の赤潮で大きな被害を受けたえりも町のウニですが、今年の出荷が始まったので現地を取材してきました。
フルーティーな「えりも産のウニ」

えりも産のウニは、他の産地のものとは一線を画す特徴を持っています。
一口食べると、まるでトロピカルフルーツのような華やかでフルーティーな香りが鼻を抜けるのです。
この独特の香りは、えりもの豊かな海で育つ良質な昆布を食べて育つためだと言われています。
実際に食べてみると、その濃厚な味わいと香りの良さに、改めてこのウニが「特別」であることを実感させられます。
出荷作業にも一切の妥協はありません。ウニを割って身を取り出し、丁寧に「綿(内臓)」を取り除きます。


その後、色や味が優れたものだけが厳選され、塩水パックに詰めたらすぐに出荷されます。
まさに「割られたて、詰めたて」の状態で即日出荷されているのです。
2021年の悲劇:赤潮によるウニ全滅の危機
今から約4年前の2021年、北海道では前例のない規模の赤潮が発生しました。
赤潮とは、特定の微生物が増えすぎて海が赤くなり、酸素不足などで生物を死滅させる現象です。
この影響で、えりも町沿岸のエゾバフンウニはほぼ全滅するという壊滅的な被害を受けました。
ウニが稚うにから出荷可能なサイズに育つまでには約4年の歳月を要します。
そのため、当時の赤潮は単年の被害に留まらず、その後4年間にわたって漁師たちの冬の貴重な収入源が断たれるという、非常に厳しい状況を招いたのです。
復活を支える裏舞台:ダイバーによる手作業の放流

今回の取材では、ウニの復活を支える「種苗(しゅびょう)センター」の取り組みを詳しく見ることができました。
ここでは、人工授精させたウニを陸上の生け簀で約1年かけて育てます。

直径2〜3センチほどになった稚うには海へ放流されるのですが、その手法には驚かされます。
なんと、ダイバーが海に潜り、岩場の一つひとつに手作業でウニを定着させていくのです。
えりも町は冬の荒波が非常に激しく、港の中でも設備が流されてしまう恐れがあるため、一般的な養殖筏(いかだ)などを使うことができません。
自然の厳しさと共存しながらウニを守り育てるためには、この気の遠くなるような手作業が必要不可欠なのです。
ウニ1枚が20万円も!?なぜウニは「高嶺の花」になったのか
近年、市場でのウニの価格は驚くほど高騰しています。
豊洲市場では、1枚(1折)が数万円から、時には20万〜30万円という値がつくこともあります。
この背景には、世界的な高級寿司ブームによる需要の急増があります。
例えば上海のロックダウン時にウニの価格が2〜3割下がったという事例からも、いかにグローバルな「取り合い」が起きているかが分かります。
えりも町のウニはふるさと納税でも!
美味しいウニの裏側には、赤潮の試練を乗り越え、地道な努力を続ける人々の情熱と膨大な手間暇があります。
えりも町のウニを見かけた際は、ぜひその背景にも想いを巡らせてみてください。
また、ふるさと納税などを通じてえりも町の漁業の現場を応援することもできます。
濃厚でフルーティーなえりも町のウニを、ぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。

