最近、「持続可能」「サステナブル」という言葉を見ない日はありません。
環境問題への関心が高まるなかで、この言葉は疑う余地のない「正しさ」として扱われることが増えました。
漁業の現場でも、さまざまな資源管理や認証制度が広がっています。
しかし、ふと立ち止まって考えてほしいことがあります。
私たちは何を持続させようとしているのでしょうか。
今回は、さかなのNEWS編集長・ながさき一生の解説をもとに、「持続可能」は、本当に持続可能なのかについて考えていきます。
サステナブルは、環境保護だけを表す言葉ではなかった
実は「サステナブル」という考え方は、単に自然を守るためだけに生まれた言葉ではありません。
1987年のブルントラント報告では、「将来世代のニーズを損なうことなく、現在世代のニーズを満たすこと」が持続可能な開発の条件として示されました。
ここで重要なのは、「開発」という言葉です。
「環境保護か開発か」という二者択一ではなく、その両立を目指しているのです。
当時問題になっていたのは、急速な経済成長や大規模開発による環境への負荷でした。
そこで生まれたのが、「将来世代の利益も考慮しながら社会や経済を発展させる」という持続可能な開発の考え方だったのです。
水産業で進む「持続可能な漁業」
水産業でも近年、「持続可能な漁業」が重要なテーマになっています。
魚の資源量を調査し、科学的なデータに基づいて漁獲量を管理する。
資源を獲り尽くさないために、ルールを設けながら利用していく。
こうした考え方は、特に大規模な漁業において大きな意味を持っています。
大量に魚を漁獲する場合、管理が不十分であれば資源の枯渇につながる可能性があるからです。
しかし、ここで考えたいのは、そのルールは、本当にすべての漁業者に必要なのだろうかという点です。
小さな漁業は、そもそも持続可能だった

日本には全国各地に小規模な沿岸漁業があります。
家族経営で行われている漁業や、地域の海を守りながら細々と営まれている漁業も少なくありません。
こうした漁業は、大規模漁業と比べると漁獲量も限られています。
もともと地域のルールや慣習の中で資源と向き合いながら続けられてきたケースも多くあります。
ところが近年は、資源管理や認証制度など、さまざまな「持続可能性の基準」が求められるようになりました。
資源量の把握。漁獲データの記録。認証取得のための手続き。
こうした取り組みによる管理コストは、小規模な漁業者にとっては大きな負担になることもあります。
本来は大規模な開発や大量生産による環境負荷を抑えるために作られた仕組みです。
環境への影響が比較的小さい小規模事業者にも同じように求められると、事業そのものが立ち行かなくなってしまいます。
果たして、小さな漁業に、大規模漁業と同じルールは必要なのでしょうか。
「持続可能」のために、本当に必要なこと
魚の資源を守りながら、漁業や魚食文化も未来へつないでいくためには、何が必要なのでしょうか。
重要なのは、そのルールや基準が誰を対象に作られたものなのかを理解することです。
もともと持続可能性という考え方は、大規模な開発や生産活動が環境へ与える影響への反省から生まれました。
だからこそ、本来は大規模な事業と、小規模で地域に根ざした営みとを分けて考える視点が必要です。
環境負荷の大きな産業と、昔から地域の海と向き合いながら続いてきた小規模漁業では、状況は大きく異なります。
大切なのは、一つの正解を押し付けることではなく、それぞれの現場に合った持続可能性のあり方を考えること。
「持続可能」という言葉が、長年続いてきた小さな漁業を追い詰める結果になってしまっては本末転倒です。
私たちは一体何を持続させたいのか。
その問いに向き合うことこそが、本当の意味で持続可能な未来への第一歩なのかもしれません。

