2025年の漁業生産量は過去最低なのに、主要漁港は好調?データで見る日本の水産業の今

2025年の日本の漁業・養殖業生産量が、5年連続で過去最低を更新しました。

農林水産省が発表した生産量の概数は、前年比1.6%減の357万7,400トン。現在の調査が始まった1951年以降で最も少なく、ピークだった1984年と比べると72.1%減少しています。

農林水産統計 令和7年漁業・養殖業生産統計

この数字だけを見ると、「日本の海から魚がいなくなっている」「漁業は衰退する一方だ」と感じるかもしれません。

しかし、同じ2025年の全国主要漁港の水揚げを見ると、少し違った景色が見えてきます。水揚げ数量を増やした漁港があるだけでなく、水揚げ金額では上位10港のうち8港が前年を上回っているのです。

日本の漁業では、いま何が起きているのでしょうか。

目次

漁業・養殖業生産量は357万トン、1984年から7割減

2025年の漁業・養殖業生産量は357万7,400トンとなり、過去最低を更新しました。日本の漁業生産量では、400万トン前後が一つの目安とされてきましたが、現在はその水準を下回っています。

ただし、ピークだった1984年との比較には注意が必要です。

1984年は、マイワシが日本近海で例外的に多く発生していた時期でした。当時は、マイワシだけで現在の漁業・養殖業全体を上回るほどの量が漁獲されていたといいます。

マイワシの資源量は、海水温や海流などの海洋環境によって大きく変動します。当時の増加は、人間が漁獲量を調整するだけでは説明できないほど大規模な自然現象だったと考えられています。

そのため、「1984年から7割減った」という数字を、そのまま現在の資源管理の失敗や魚の減少だけに結びつけることはできません。

漁獲量全体の変化には、魚の数だけでは説明できない要因も含まれています。

主要漁港の水揚げ金額は増加

全国の水揚げ量が減っている一方で、2025年の主要漁港では水揚げが増えた地域もありました。

日刊水産経済新聞の2026年1月26日の記事によると、

水揚げ数量1位の銚子漁港は前年比152.8%となり、大幅に増加。3位の境港も前年比101.6%と、前年を上回りました。数量上位10港のうち、およそ半数が前年より水揚げ量を増やしています。

さらに目立つのが、水揚げ金額の増加です。

金額では焼津が1位、福岡が2位、長崎が3位となり、上位10港のうち石巻と三崎を除く8港が前年を上回りました。

全体の生産量が減っているのに、なぜ主要漁港の水揚げ金額は増えているのでしょうか。

一つには、魚の単価が上がっていることが考えられます。漁獲量が同じ、あるいは少なくても、高値で取引されれば水揚げ金額は増加します。

また、高級寿司店や海外の飲食店向けなど、品質の高い魚に対する需要もあります。日本の水産物に対するニーズがなくなったわけではなく、むしろ高品質な魚や高付加価値商品が求められる市場では、成長している分野もあるのです。

漁業者の減少と、大きな漁港への集約が進んでいる?

もう一つ考えなければならないのが、漁業をする人そのものの減少です。

日本の漁業就業者は長期的に減り続けています。近年だけを見ても、2003年には約23.8万人いた漁業就業者は2023年には約12万人まで減少しました。昔と比べれば、漁業を仕事にする人の数は大きく縮小しています。

魚が海にいても、漁に出る人や船が減れば、生産量は下がります。高齢化や後継者不足によって地域の漁業者が廃業すれば、小さな漁港での水揚げも減っていきます。

一方で、主要漁港では水揚げ量や金額が増えている。この二つの動きを合わせて考えると、水揚げが一部の大きな漁港や市場へ集約されている可能性があります。

もちろん、今回のデータだけでは、小規模な漁港の水揚げがどれほど減ったのかを断定することはできません。

それでも、日本の漁業が一律に縮小しているというより、小規模な漁業が減少し、大規模な産地や高付加価値市場へ集約されていると考えると、全体の生産量と主要漁港の数字の違いが見えやすくなります。

日本の漁業は「衰退」ではなく、構造変化の途中にある

漁業・養殖業を取り巻く環境では、向き合わなければならない課題は少なくありません。

しかし、生産量が減ったという数字だけで、日本の漁業全体に将来性がないと判断するのも早計です。

主要漁港では水揚げ金額が増え、国内の高級店や海外市場では質の高い日本の魚が求められています。量を多く獲る漁業から、価値を高めて届ける漁業へと変わっている側面もあります。

いま起きているのは、単純な衰退ではなく、漁業者や漁港、販路、市場の構造変化なのかもしれません。

「過去最低」という大きな数字だけを見るのではなく、どの魚が減り、どの地域が伸び、どの市場で需要が生まれているのか。細かく見ていくことで、日本の漁業が抱える課題と、これからの可能性の両方が見えてきます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

さかなのNEWS編集部。魚、漁業、水産業のことを「広く」「深く」「ゆるく」伝えています。

目次