コロナ支援のためのお取り寄せの動きが広がっています。しかし、それに便乗して本来コロナの影響に関係のない商品や粗悪な商品も出回るようになってきました。とりわけ海産物は消費期限も短く、デリケートな商品です。今回、おさかなコーディネータのながさき一生がレポートします。

お取り寄せ海産物の例

コロナウイルスが水産業に与えた影響

コロナウイルス蔓延による自粛の影響は、海産物の流通にもかなり出ています。特に飲食店、ホテル、観光施設の外食向け海産物は軒並みに注文がキャンセルされ、流通が滞っている状況です。

一方で、スーパーなどの小売はそこまでの影響はありません。しかし、外食向けの海産物をそのまま小売に流せばよいのかというと、そう簡単な話ではありません。スーパーのような量販店で扱える海産物は限られ、外食にしか出回らないような高級魚や数量の少ない魚は行き場を失っています。

そうなると、活路を見い出せるのは、消費者に直接販売できるECとなり、これまで手を付けていなかった事業者もECを始めるようになっています。現在、本来は飲食店向けに流通されていた高級魚がECを通じてお手頃な値段で手に入るようになっています。消費者とすると、こんなにも魚をお得に楽しめる機会は滅多にないともいえます。

かつてない盛り上がりを見せる5670(コロナゼロ)プロジェクト

ということで、海産物のECはかつてない盛り上がりを見せています。その中でとりわけ盛り上がっているのが、余ってしまった外食向けの立派な真鯛を5760尾売ろうという「5670(コロナゼロ)」プロジェクトです。このプロジェクトは、三重県南伊勢町で真鯛養殖を営む友栄水産(https://yuuei.co.jp/)が、ECサイト「ポケットマルシェ」(https://poke-m.com/)を使って始めました。

 当初、友栄水産は、数万匹単位で注文のキャンセルが出て、それを廃棄するしかない状況に陥りました。そのような状況の中、近隣の肉屋から「5670(コロナゼロ)円で肉を販売したら、やたら売れた」という話を伺います。それを聞いて、「コロナゼロにあやかって、5670匹をあえて丸々一匹か、それに近い姿で出荷し、5670家庭に捌いてもらったら、未来に真鯛を食べてくれる人が増えるんじゃいか」という思いで当プロジェクトを始めたといいます。一般家庭で立派な真鯛を捌くことは普通ありません。本当に売れるのか、最初は疑念もあったそうです。しかし、ZOOMを使って捌き方教室も行い、始めてみるとこれが大当たり。真鯛を単に売るというよりも、真鯛を捌く非日常と、困っている養殖業者を助けるという一連の体験を提供することで爆発的に注文が伸びたといいます。

5670プロジェクトは、各種メディアにも取上げられ、5670に関連した取組みは、近隣の花屋など、様々なところに広がりを見せているそうです。

一方で「?」な商品も

5670プロジェクトのような取組みは、真の意味でコロナ支援につながり、美味しく楽しい体験ができる素晴らしいものです。しかし、このようなコロナ支援の取組みが広がるにつれ、それに便乗する形で、「本当にこれはコロナ支援なのか?」と思ってしまう商品や、「単に売れない在庫の処分なのではないか?」と思ってしまう粗悪な商品も出回るようになってきています。

 例えば、元々通販向けに企画されたであろう加工品を見ますが、それらは比較的日持ちもし、保存が効くため、緊急かと言われると疑問です。また、黒ずんでおり冷凍焼けがひどい冷凍品も見受けられます。このような商品は、元々日が経っていたり、入出庫を繰り返し、凍結と解凍が繰り返されてしまったものであったりと、品質の良くないものです。

 そして恐ろしいことに、コロナ支援で、とある冷凍牡蠣取り寄せたところ、食あたりになってしまった、という話も実際に聞きました。  このように、せっかくコロナで困っている事業者を助けて、かつ美味しい海産物をお得に食べようと思っても落とし穴が潜んでいる場合があります。このような落とし穴にはまらないためには、次のことに気をつけるとよいです。

コロナ支援で海産物を選ぶポイント

まず、コロナの被害で滞っているのは、主に外食向けの流通です。なので、外食向けの海産物を選べば良いのですが、そのポイントとして「スーパーにないものを選ぶ」ということがいえます。例えば、アジやカツオ、タコではなく、ウニや伊勢エビといったものを選んだ方が、お得感が強いことが多いでしょう。大まかにいえば、「大衆魚よりも高級魚が狙い目」ともいえます。  また、外食向けの商品は、業務用として売られているため、元々写真やパッケージが凝っていません。そのため、急いで撮った凝っていない写真やパッケージが地味な商品の方が、コロナ支援の意味合いが強い場合が多いです。

さらに、冷凍品でなく冷蔵品(チルド)の海産物を選ぶことがポイントです。冷凍品は保存が効くため、頑張ればコロナ終息後まで持ち越すことができます。しかし、冷蔵品の場合は保存が効かず、今買ってもらわないと廃棄をしなければならなくなります。例えば、同じマグロでも冷凍品と冷蔵品があります。コロナ支援であれば、冷蔵品の方が意味合いはより強くなります。

また、同じ考え方でなるべく保存が効かないものを選びましょう。ウニであれば、塩ウニや瓶ウニでなく、生うにを選ぶとよいでしょう。

そして、天然よりも養殖の海産物を選ぶことが3つ目のポイントです。天然の海産物は必要に応じて漁に出て獲りにいくため、在庫を抱えて流通が滞る構造とはなっていません。一方で、養殖魚は出荷の時期を逃すと大きくなりすぎて売り物にならなくなります。より状況が差し迫っているのは、養殖魚の方です。養殖は、真鯛やブリ、ヒラメといった魚で盛んです。このような養殖魚を頼むとお得に楽しめて、支援の意味合いも大きくなります。 おうち時間が増えた今、料理をする時間も取れ、家庭でとてつもなく豪華な海産物を楽しむチャンスが到来しています。コロナで大変な思いをしている漁業関係者のためにも、美味しい魚介を楽しみながら支援を行ってみてはいかがでしょうか。

【筆者プロフィール】
さかなのNEWS編集長・ながさき一生
漁師の家庭で18年間家業を手伝い、東京海洋大学を卒業。現在、同大学非常勤講師。元築地市場卸。食べる魚の専門家として全国を飛び回り、魚好きのゆるいコミュニティ「さかなの会」を主宰。

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