今年のサンマはどうなる?黒潮大蛇行の終息で獲れる魚はどう変わるのか

「サンマが戻ってきたらしい」

2025年秋、そんなニュースに少し驚いた人も多いのではないでしょうか。

ここ数年、サンマは不漁続きでした。かつては庶民の味として親しまれていた魚が、いつしか「高級魚」と呼ばれるようになり、食卓から遠ざかっていたからです。

そんな中、2025年4月、日本の海にとってひとつの大きな節目となる出来事がありました。約7年半にわたって続いていた「黒潮大蛇行」が終息したのです。

日本近海を流れる黒潮は、多くの魚たちの回遊や生態に大きな影響を与える存在です。

その流れが変わることで、私たちの食卓に並ぶ魚にも変化が生まれる可能性があります。

もちろん、魚の漁獲量は海水温や資源量、漁業の状況などさまざまな要因が複雑に絡み合っているため、一つの理由だけで説明できるものではありません。

しかし今回、黒潮大蛇行の終息によって、海では何が起きているのか。

そして、これから日本の魚食はどう変わっていくのでしょうか。

さかなのNEWS編集長・ながさき一生の解説をもとに、海の変化と私たちの食卓への影響を考えます。

目次

そもそも「黒潮大蛇行」とは?

黒潮は、フィリピンの東側から日本列島沿いを北上する暖かい海流です。

その流れの速さや規模から「海の大動脈」とも呼ばれ、日本近海の気候や漁場の形成に大きな影響を与えています。

通常、黒潮は紀伊半島や東海沖を通り、本州の南岸に沿うように流れていきます。しかし、ときどきその流れが大きく南へ迂回し、蛇がうねるような形になることがあります。この現象が「黒潮大蛇行」です。

黒潮大蛇行そのものは珍しい現象ではありません。過去にも何度か発生してきましたが、2017年8月に始まった今回の大蛇行は約7年半にわたって続き、観測史上でも異例の長さとなりました。

2025年にサンマが豊漁だった理由は?

2025年は、久しぶりにサンマの豊漁が話題になりました。

サンマは冷たい海を好む魚です。水温15度前後の海域を回遊しながら南下してきます。

しかし黒潮大蛇行の期間中、三陸沖には20度を超える暖かい海水が入り込みました。サンマにとっては、本来通るはずだったルートがふさがれてしまったような状態です。

その結果、日本近海までたどり着けるサンマが減り、不漁が続いたのではないかと考えられています。

同じような現象はウナギでも起きています。

ウナギの稚魚であるシラスウナギは海流に乗って日本へやってきます。近年、シラスウナギが比較的豊漁なのも、海流の流れ方が関係している可能性があるのです。

ただ、何度も言いますが、魚の漁獲量については自然界の話なので黒潮大蛇行だけが原因と断言することはできません。あくまで黒潮の流れは大きな要因のひとつとして挙げられているものなのです。

サンマが増えれば、別の魚が減るかもしれない

海の変化には必ず表と裏があります。

サンマが戻ってきたからといって、すべてが良い方向へ進むわけではありません。

近年はカツオの不漁が話題になることもありました。
南から黒潮に乗って北上するカツオにとって、海流の変化は回遊ルートそのものを変えてしまいます。

また、サンマとサバは同じ海域で暮らすことが多く、餌や生息場所が重なる部分もあります。

サンマが増えれば、サバが住みにくくなる可能性もある。
海の中では常に魚同士の勢力争いが起きているのです。

さらに近年は海水温の上昇も重なり、魚の分布そのものが変わっています。

北海道では珍しかったブリが水揚げされるようになり、東北では伊勢エビやフグが獲れるようになりました。

私たちの常識で考えると違和感がありますが、魚たちは人間の都合ではなく、自分たちが生きやすい場所へ移動しているだけなのです。

海は昔から変わり続けてきた。レジームシフトという自然界のサイクル

こうした話を聞くと、「海は大丈夫なのか」と不安になるかもしれません。

しかし、長い目で見ると海はもともと変化するものなのです。

実は1990年代にサンマが豊漁だった時代の前には、マイワシが爆発的に獲れていた時代がありました。

マイワシが減るとサンマが増える。
サンマが減ると別の魚が増える。

こうした自然環境や生態系が変わる現象は「レジームシフト」と呼ばれています。

私たちは「サンマが減った」と一つひとつの出来事を見がちですが、もっと大きな視点で見ると、海全体では別の魚が増えていることも少なくありません。

つまり「魚がいなくなった」のではなく、「いる魚が変わった」のです。

改めて見直したい、日本ならではの魚の食べ方

「サンマが減った」というニュースを目にすると、不安になる人もいるかもしれません。

しかし、日本近海には数千種類もの魚が生息しています。

その中には、私たちが普段見かける魚以外にも、おいしい魚がたくさんいるのです。

まとまった量が獲れない、調理にひと手間かかる、鮮度管理が難しいといった、流通や加工の都合によって市場に出回りにくいだけで、味そのものは非常においしい魚も少なくありません。

大切なのは、「自分たちが食べたい魚」だけを追い求めるのではなく、「今、海に増えている魚を食べる」という発想です。

みんながマグロばかりを求めれば、資源への負荷は大きくなります。一方で、その時々の海で豊富に獲れる魚を食べるようになれば、自然の変化に合わせながら資源を利用することができます。

それは結果として、海の生態系を守ることにもつながります。

実は、この考え方は決して新しいものではありません。

日本人は昔から、その季節にたくさん獲れる魚を食べながら暮らしてきました。

今こそ、日本人が長く育んできた魚食文化の原点に立ち返る時なのかもしれませんね。

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この記事を書いた人

さかなのNEWS編集部。魚、漁業、水産業のことを「広く」「深く」「ゆるく」伝えています。

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