「サンマが不漁」「スルメイカが獲れない」「マグロの資源が回復した」。
毎年のように、魚の豊漁や不漁に関するニュースが報じられます。
しかし、ニュースを追えば追うほど、「結局、日本の魚は減っているの?」「魚を獲りすぎているの?」と、よくわからなくなる人もいるのではないでしょうか。
そんな「魚と漁業をめぐる疑問」と「科学的に裏づけされた旨い魚の食べ方」まで解説した一冊が発売されました!
さかなのNEWS編集長のながさき一生の新刊、『旨い魚が食べたい! 科学の目で見る漁業と魚食』から、私たちが魚のニュースを見るうえで知っておきたいポイントを紹介します。
同じサンマなのに「豊漁」と「不漁」?魚のニュースは切り取り方で変わる
魚のニュースを見ていると、漁獲量の話題をよく目にします。
しかし、その数字だけで海全体の状況を判断するのは簡単ではありません。
ある年にはサンマについて、「豊漁」と「不漁」という正反対のニュースが報じられたことがありました。
理由は、北海道では豊漁だった一方、三陸では不漁だったから。
どの地域や期間を切り取るかによって、同じサンマでもニュースの見え方は変わります。
魚が減った理由についても同じです。
「漁師が獲りすぎたから」と説明されることがありますが、実際には漁獲だけでなく、海洋環境などさまざまな要因が関係します。
そもそも、何が主な原因なのか、はっきりわかっていないケースも少なくありません。
だからこそ本書が大切にしているのが、タイトルにもある「科学の目」です。
ニュースの見出しだけで「獲りすぎだ」「もっと獲ればいい」と判断するのではなく、その背景も含めて冷静に見るためのヒントが散りばめられています。
スルメイカの寿命は約1年。「獲らなければ増える」とは限らない
魚介類をひとまとめに考えられないことがよくわかる例が、スルメイカです。
スルメイカの寿命は約1年。
そのため、その年の海洋環境の変化に大きく左右されます。
長く生きる魚であれば、今年獲らなかった魚が翌年以降の資源につながることがあります。
しかし寿命の短いスルメイカの場合、獲らずに残したとしても、その多くは寿命を迎えます。
もちろん、「だから好きなだけ獲っていい」という意味ではありません。
資源が多い年にはある程度利用し、少ない年には状況に応じて調整するなど、魚種ごとの生態を踏まえて考えることが重要です。
さらに水産資源は、日本だけの問題でもありません。
日本がスルメイカの漁獲を控えても、他国が漁獲する可能性があります。
国内需要を輸入品で補えば、日本の漁業者が獲らなくなった分を海外から買うだけ、ということも起こり得ます。
実際の漁業はそれほど単純ではありません。
本書では、マグロやカツオ、サンマ、スルメイカなど、それぞれの魚が抱えている事情を魚種別に紹介しています。
魚によって生態も資源管理も違うからこそ、魚種ごとの違いを知ることが、水産ニュースを読み解く第一歩になります。
スーパーから消えていく魚たち。日本の「少量多品種」という魚食文化
『旨い魚が食べたい! 科学の目で見る漁業と魚食』で書かれているのは、水産資源の話だけではありません。
日本人がこれまでどのように魚を食べてきたのか、魚食文化についても掘り下げています。
その特徴を表すキーワードが、「少量多品種」です。
日本では昔から、ひとつの魚を大量に利用するだけでなく、その地域や季節に獲れるさまざまな魚を少しずつ食べてきました。
コチ、オコゼ、カレイなど、スーパーではあまり見かけなくなった魚もそのひとつです。
さまざまな種類を利用する魚食文化には、特定の魚ばかりに利用が偏らず、海の生態系を幅広く活用できるという側面もあります。
ところが現在は、大型スーパーなどのマス流通が主流です。
同じ規格の商品を大量に仕入れ、同じ方法で加工・販売するほうが効率的なため、どこにいっても同じような魚が店頭に並んでいるという構造になりやすくなります。
反対に、少ししか獲れない魚を何種類も扱うとなれば、魚ごとの知識が必要になり、加工や販売のオペレーションも複雑になります。
効率化によって私たちの食生活は便利になりました。
その一方で、「おいしいけれど大量流通には向かない魚」と出会う機会が失われつつあるのです。
「旨い魚を食べたい」から、これからの漁業を考える
そして本書には、少し難しい漁業や資源管理の話だけでなく、魚をどう食べればおいしいのかという話もしっかり登場します。
産地の食べ方から、美食家に教わった美味しい食べ方まで、これまで全国各地の漁業の現場を巡り、メディア出演もしてきたながさきならではの視点で、「どう食べるとうまいか」について解説されています。
旨い魚を食べ続けるために、私たち消費者も、魚のこと、海のこと、漁業のことについて知っておきたいことがたくさんあります。
魚が好きな方にはぜひ手に取っていただきたい一冊です。


